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「それ、お母さんの指輪。お母さんは僕のお婆ちゃんから貰って、お婆ちゃんは、そのまたお婆ちゃんから貰った大事な指輪だって。お母さんが言ってた」 「へぇ……」 なんで、それを俺たちに? 「その指輪、お母さんの家族に渡して欲しい。 その指輪は、お母さんが死んだ時持ってた物だよ。それをお寺から持ってきたの」 話を詳しく聞くと、どうやら、お母さんの美和子さんは遺族が近くにはおらず、無縁仏としてお寺にお骨が納められた。 指輪は、大事に宏則の写真と一緒に、握りしめていたらしく、お寺の方が遺品として箱に入れて、保管していてくれたらしい。(まぁ、色んな人の物も入ってたかも知れないが) 俺も美和子さんが亡くなった時、宏則の写真が握りしめられているのは見たが、その時、一緒に指輪も握っていたんだな……。 それをあの女の子が時間をかけて、こっそりと盗み出したのだ。 時間をかける間に泥だらけになったようだけれど…… 「一体、あの女の子は?」 「あの女の子は、僕のお母さんの兄弟の……子供?だって」 「……姪かな?」 でも、姪なら、もう少し歳をとっていてもいいはずだろ。どういう事だ。 「ゆうらんさんて言うの」 俺は、あの女の子が「ゆーらん…」と言っているのを思い出した。
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