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中は電気が付いておらず、真っ暗だ。携帯電話の懐中電灯で、部屋の中を照らす。 誰も使っていなさそうな部屋。物置……かな…… 色んな家具や、片づけられた箱が詰め重ねられている。 あと、俺たちが入ってきた扉以外に、もう一つ扉がある。 一階に繋がる階段があるのかも? そっと、部屋に入り、玉蘭(ゆうらん)ちゃんを見る。 「ぶぅやおらい……じょおりー」 俺たちを指差してから、両手の平をくっつけ自分の頬にその手を当てる。 「ここで、休めって言ってるんじゃない?」 「でも、中国語で、ぶぅって付いてるって事は否定の意味じゃなかったっけ?」 俺たちはもう一度玉蘭(ゆうらん)ちゃんを見つめる。 彼女は濃い赤の小さなソファを指差す。 「やっぱりここで休めと言ってるのよ」 「でも、人が来たらどうするんだよ」 不安そうにしているのが伝わったのか、玉蘭(ゆうらん)ちゃんは、またジェスチャーをする。 「ぶぅらい…じゃお、りー」 大きく手を広げて、それから頭を振った。 「人が来ないと言ってるのかしら?」 「分からない、でもそんな気もする」 「だい…ないない」 玉蘭(ゆうらん)ちゃんは、そう言って消えた。 「だいないないって、何かしら」 俺は携帯で中国語検索をする。 「えっと……ないないは…祖母。だいは、分かんないな…でも、お婆ちゃんて…指輪をそのお婆ちゃんに渡すのかな」 「きっと。そうだわ」
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