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俺たちは玉蘭ちゃんに言われた通り?なのかは分からないが、ソファの埃を少し払って、座って待つ事にした。
「ちょっとドキドキするな」
「そうね、こんな事私も初めてよ」
携帯の懐中電灯を消し、バッグからちゃんとした懐中電灯を出す。
全体的に周りがさっきよりよく見えるようになり、
もう一度辺りを見回してみる。
積まれた箱、それからタンス、本棚、机……。
俺は立ち上がり、机に近付いた。
勉強机かな?
古い絵が壁に貼ってある。
小さな子が描く、家族の絵、という感じだ。
書いてある人物はみんな笑顔。
右下に名前が書いてあるのに気がつき、顔を寄せた。
陳秀琴……
「よくお越し下さったね」
急に声が聞こえて、俺は肩をビクッと震わせた。
水夜もソファから立ち上がる。
俺たちが入ってきた扉ではない方の扉から誰か入ってきた。
思わず後ずさる。
小さなランプでこっちを照らされ、目を細めた。
「玉蘭が連れてきた人たちだね?」
さっき、玉蘭ちゃんが、言ってた"ないない"…お婆ちゃんなんだろう。
お婆ちゃんというから、もう少ししわくちゃのお婆ちゃんを想像していたが、そうでもなく、50代のおばさん、という感じで、身嗜みも小綺麗にしているからか、若く見えた。
それに、日本語が上手い。日本語がわかる人がやってきて、俺は内心ホッとした。
「私は美恵と言う名前で、美和子の母親です」
その言葉に「えっ!」と大きな声が出た。
宏則のお母さん。
あの美和子さんか!?
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