時間を移動する

48/57
前へ
/360ページ
次へ
「そして、最近になって、ようやくいい話に変わった。美和子と宏則はやっと会えたと。そして、もうすぐ、この親子を助けた日本人がここへ会いに来るって言ったの」 俺と水夜は顔を合わせる。 俺たちの事だ。 今度は俺たちの話す番だ。 美恵(めいふぇん)さんの話同様、こっちの話も不思議な事だけど、受け入れて貰えるだろう。 まず、俺たちは時間を超えて、いろいろな世界に行く事ができる事。今も、違う年代からやって来た事を話した。 そして、宏則の出来事を俺が見てきた事を言おうとしたが、身内にあんな酷い事を話してもいいのか、ちょっと迷う。 「ひともさん、悲しいけれど、全部受け入れたいから話してちょうだい。あの子たちがどんなに悲しかったか、私も受け止めたい」 美恵(めいふぇん)さんの、目はすでに涙で潤んでいたけれど、俺を見つめるその眼差しは、心の準備が出来ている。 「……分かりました。 ……宏則は、玉蘭(ゆうらん)ちゃんが言うように、殺されました。美和子さんを好きだった男が犯人です」 話すのが、俺もツラい。 美恵(めいふぇん)さんは、頬を伝う涙も気にせずに、俺の目をシッカリと見ている。 「男は美和子さんが勤める店に通う客のようでした。美和子さんを好きになり、一緒になりたいが為に、宏則の首を締めて…殺しました」 俺も目をそらさずに、話そうとするが、声が詰まる。 やっぱり俺も悲しくなった。 「美和子さんが仕事に出て、1人になった宏則を狙いました。その男は宏則を埋めやすいように、切り刻み、山に埋めました」 「そんなっ…身勝手な男に!!宏則は!」 初めて、美恵(めいふぇん)さんは、声を大きく出して、嗚咽を漏らした。 顔を両手で覆い、肩を大きく揺らしている。 話すのを少し待った。 どっちにしろ、俺も涙を堪えるのに必死だったから良かった。
/360ページ

最初のコメントを投稿しよう!

190人が本棚に入れています
本棚に追加