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「この指輪…」 「最後に美和子さんが握っていた指輪です」 美恵(めいふぇん)さんは、指輪を握りしめ、クゥと小さく堪えて泣いた。 「この指輪は、私の母から貰った大切な指輪なのよ。母は祖母から…でも、日本へ行くときに、私は秀琴(しゅうちん)に……美和子に渡したの。もし、何かあったらこれを売ってお金にしなさい、と言ったの。でも、あの子は、これを売らずに大切にしていてくれたのね」 「美和子さんの形見ですね…」 「あぁ、秀琴(しゅうちん)、秀琴っ!……ううう、秀琴…宏則と、帰って来ておくれ……秀琴……あぁあ…」 号泣する美恵(めいふぇん)さんを見て、俺も涙が溢れた。 水夜は、泣いてはいなかったが、もともと白い肌が、更に青白くなっている。色んな話を聞いて彼女も、ツラいのだろう。 でも、話が全て繋がった。 もう、会いたい人は帰っては来ないけど、魂はみんな安らかに過ごしている。時間はかかったけど、それだけは良かった。 あとは、宏則からも形見を貰わなければ。 何をくれるのだろうか? 台湾から、これで帰っていいのかな…?
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