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初めて2階へ上がった。
水夜の後ろから、広い階段をついて上がり、言われた通り、4つ目のドアの前で止まる。
「はい、この部屋の鍵よ。まぁ、急に開ける事もないし、詮索したりはしないけど、気になるなら鍵を閉めていいわ」
「いや、鍵は閉めない」
「そう?でも、渡しておくわ。とりあえず着替えたら下りてきてちょうだいね」
水夜はそのまま来た廊下を戻り、階段を降りて行った。
俺は水夜を見送ってから、ドアのノブを回す。
中は、おおよそ12畳くらいで、濃い茶色の高級そうな机と、大きなベッド。奥にはクローゼット。
それから、クローゼットの横の壁には、アンティーク調の、装飾が細やかな鏡があった。
どの家具も傷つけたら大変だ。
俺はその部屋で着替えを済ませて、1階へ下りる。
「緋朝、部屋はどうかしら?気に入った?」
「あぁ、うん。部屋の中も豪華で凄いね、綺麗な部屋で気に入ったよ。でも、傷をつけたら大変そうで、ちょっと怖いよ」
「良かった。全部古い物だから多少傷付けても気にしないわ。のびのび使ってくれて結構よ。さぁ、こっちへどうぞ。夕食を作ったわ」
1階も、ロビーのいつも座るソファーのある空間しかいた事がない。
2本の白い大きな柱を抜けて、別の部屋に入る。
赤い絨毯、赤いカーテン。大きな暖炉の上には見事な角を持った鹿の首の剥製。
ホテルのビュッフェの食事が並びそうな長いテーブル。
でも、その長いテーブルには、ポツンと俺たちの夕食しか乗っていない。
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