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母屋の客室。 低い段差のある窓際に座り、小さな窓の外を覗けば、さっき通ってきた、民家の並びの灯りが見える。 隣には、狭いベランダもあり、青の薄いカーテンが風でなびいている。 日本の畳のような床に、ふかふかそうとは言えない布団が2つ並べて敷かれていて、正方形の小さなテーブルが置いてあるけれど、それでほぼいっぱいの部屋だった。 でも、ここまでしてくれた事に感謝だ。文句なんてない。 俺たちは、持ってきたバッグをポンと置くと、窓の段差に2人で腰掛けた。 外の風が気持ちよく、旅行に来て、ホテルの部屋に着いた気分だ。 「じみんさんに何の理由で会いに行くんだろうな」 俺は布団に大の字になりながら言う。 「分からない……水晶で見てみる?」 「え、持ってきてたの!?」 「一応ね、何があるか分からないし」 水夜はバッグの中から、丁寧に布に包まれた水晶を出す。 それから、フワリと手をかざした。 前に見た、紫色の霧のようなものが水晶の中を漂い、しばらくすると、その霧がすうっと晴れ、椅子に座ったお爺さんが映し出される。 「これが、じみんさんと言う方かしら?」 俺は布団から起き上がり、水晶を覗く。 「……これでみると普通の爺さんだな」 しかし、そのあと、水夜と俺も映り、その爺さんと俺たちで何か話し合っている姿が見えた。
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