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「何を話しているんだ?」
「分からないけれど…見て、じみんさん、私だけを呼んでいるわ。
緋朝は部屋から出て行くみたい。どう言うことかしら」
水晶の中で、俺は1人水夜を残して出て行く。
この人が、じみんさんと言う人が、悪人だったら……
水夜を1人にして、部屋を出るなんて、危ないに決まっている。
水夜を1人にさせてはいけない、と思ったものの。
***
次の日、美恵さんの案内で、俺たちは隣村の志明さんを家を訪れた。
水晶で見た通りの、どこにでもいそうなお爺さんだ。
どうやら一人暮らしのようで、部屋の中は片付いていて、家具は少ない。物を大切に使っているのか、家財道具は古いが綺麗に使われている感じがする。
美恵さんが俺たちが日本から来たことを説明してくれたのだけど、彼はふんふんと頷き、玉蘭ちゃんと同じで、俺たちが来ることが分かっていたようだった。
俺と水夜は、志明さんに頭を下げると、彼は深い皺のある顔を更にしわくちゃにさせて、ニッコリと笑った。
優しい笑顔だ。
そして、彼は、美恵さんに、何か話すと、彼女が俺たちに向かって話し出す。
「お会いできて嬉しいです、あなた方の安全や霊能力を助ける為に私は待っていました、と言ってます」
安全と霊能力を助ける為?
そして、志明さんは、俺に手招きする。
「お、俺?」
俺は水夜と美恵さんを交互に見ながら、志明さんの前へ行く。
彼は椅子に座り、俺にも椅子に座るように勧めてくる。
俺はオドオドしながら、椅子に腰掛けて、志明さんを見た。
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