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彼は手を俺に伸ばすと、手のひらを俺のおでこに当てた。
そして、美恵さんに何か話す。
「志明さんの話はこうです。あなたは死の世界を何度も行き来しています。あなたは死の世界へ行き、人助けをしていますね?でも、あなたにとっては良くない事なのです。死の世界とあなたを繋ぐ、それを止めるおまじないをします、いいですか?」
死の世界?
死の世界……
何度も水夜と行っている色んな世界の事だよな?
でも、行けなくなると困る。
水夜を見ると、俺を見て頷いた。
そのおまじないをしていいという事か?
いや、日記は?
このあとどうすればいい?
俺は志明さんに向かって、首を左右に振った。
「緋朝、そのおまじないをしてもらいなさい」
水夜が後ろから俺に声をかけるが、俺は左右に首を振り続けた。
「緋朝」
水夜の少し強い声。
志明さんは、困ったような笑顔をする。
そして、水夜を呼んだ。
「2人で話をしたいそうですよ」
美恵さんの言葉に今度は俺の代わりに水夜が椅子に座る。
「緋朝さん、外の籠にバナナとリンゴがあるので、それを持ってきて欲しいんですって」
何で、俺?と思った。
でも、昨日、水晶で見た、志明さんと水夜が2人で話をするあのシーンか!とハッとする。
……危険じゃないのか?
でも、俺を見る志明さんの瞳は、柔らかく、敵意が無い。
果物は単なる俺が外に出る理由つけで、水夜だけになにか…大切な話をするためだと、水晶で見たとおりに俺は部屋の外へ出た。
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