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俺は「シエシエ」と下手な中国語で丁寧に頭を下げると志明(じみん)さんは、またしわくちゃの顔を更にくしゃっと歪めて笑った。 それから、リンゴとバナナを俺の手に置き、持って帰りなさいというジェスチャーをされた。 「緋朝、帰りましょうか、美恵(めいふぇん)さん、本当にありがとうございましたと志明(じみん)さんにお伝えして頂けますか?」 「あぁ、勿論ですよ。他们说谢谢……」 美恵(めいふぇん)さんは、その後も少し何か話していた。 多分、世間話のようなものだろう。 彼女はすぐに俺たちの方を振り返り、「行きましょうか?」と俺たちと一緒に家の外に出た。 そして、美恵(めいふぇん)さんの家に戻り、俺たちは、玉蘭(ゆうらん)ちゃんと、美恵(めいふぇん)さんに手を振り、別れを告げた。 もう二度と会えない…… そして、日本へ戻る。 一瞬で。
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