結ばれる糸

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頭に志明(じみん)さんの言葉が浮かんだ。 "死の世界へ行かなくなるおまじない" でも、志明(じみん)さんにおまじないはされていない。 ……まさか? まさか、水夜が、俺におまじないを? さっき見た水夜の潤んだ目を思い出す。 彼女は俺が目を覚ます前に、俺の額に何かを書いたのか? 熱いシャワーを浴びているのに、サァッと寒気が襲う。 中途半端に洗った体をそのままに、急いで体を拭き、水夜の元へ急いだ。 「水夜!」 彼女は食堂で、朝食を作っている最中だった。 俺を見た途端、いつもの薄い笑みを作り「なぁに?」と答える。 「水夜、お前……俺に」 額を押さえる俺を見て、水夜は何を言いたいのか気がついたようで、唇にグッと力を込めたのが分かった。 「……緋朝」 「俺、水夜と一緒にいたい」 「緋朝、ごめんなさい……ごめんなさい」 持っていた菜箸を置き、俺の元へ小走りに近づく彼女。 両手を広げて抱きしめた。 「俺、お前と離れたくない。何で……」 「私とあなたは一緒の世界で長居してはダメだったのよ。志明(じみん)さんに説明を受けたわ。このままでは、緋朝は自分の世界に帰った時、短命になるって。この屋敷を見つける人も中々いないし、こんな長くいてくれたのもあなたが初めてなのよ。勿論、愛したのだって……知らなかったのよ、命が短くなるなんて。私も離れたくない。でも、あなたを守る事が私が出来る事なのよ」
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