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水夜の話によると、俺がぼんやり台湾の海を見ている間に、俺の能力について話しあわれた。
俺の力を封じ込める十分な力が水夜にあると志明さんは判断し、おまじないの仕方を水夜に教えた。
俺はそのおまじないを拒否するだろうと考え、俺が眠る時間を少し長めに術をかけ、額に朱色の塗料で死の文字を書いた。
この朱色も、不思議な力のある塗料を志明さんから貰ってきたんだとか。
本当は、水夜が目を覚ましてから、俺は30分ほど長く眠っていたらしい。
「このおまじないは、今すぐここに来れなくなる訳じゃないらしいの。ゆっくりゆっくりみたい。だから、すぐにお別れじゃないわ」
「イヤだっ……早く死んだっていい!」
その言葉に水夜は、俺をキッと睨みつける。
「残された家族の気持ちは?どれだけ家族が亡くなるのがツラいのか考えて?私の母は悲しすぎて、死人の私をこんなにしたわ。いつまでも独りでこうして……
死んでいるのに……感情もあって動いているのよ。そして、家族も友達も…死んでいったわ」
「……」
水夜は、誰よりも寂しくて、悲しくて、傷ついたりして死についてを理解しているハズなのに、俺はその人の前で迂闊な発言をした。
「…ごめん、でも」
「ええ、いいの。緋朝の気持ちも分かるから。でも、私の為に人生を変えないで欲しい。生きていれば素晴らしい経験だって沢山する。それを知って欲しい。
それから、あなたが歳をとって、人生を終えたら、私達はまたきっと会えるわ」
彼女の目には、いっぱい涙がたまっているのに、唇は弧を描いていた。
彼女は、涙を堪えながらも、もうしっかりと未来をみようとしていたのだ。
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