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「生まれ変わった後、前の生きていた時の記憶はなくなるけど、それでも、大切な人とは、また大切な人として出会うって、今の僕だから分かるんだ。だから、お姉ちゃんとお兄ちゃんもいつか会えるよ」
水夜が……
とうとう、ちゃんと死ぬと言うことを選べる?
死ぬ、という事をいい事と言えるかどうかは分からないけれど、ずっとずっと生き続け、誰かの死を見送ってきた水夜からすると、これはようやく安心できる場所へと行けるということだ。
寂しかった。
でも、水夜と会って初めの頃、静かで笑いもせず、無表情に話す彼女を思い出すと、彼女は光の中へ行くべきだと、俺は思った。
今朝、自分が寂しくても、俺のことを考えて、何も言わずに額におまじないをした水夜の気持ちが、今、痛い程分かる。
俺も、今は自分の事より、彼女の幸せが何より大事だった。
「水夜……」
何も言わない水夜に声をかける。
彼女は俺を一度見ると、ニコリと微笑み、それから宏則にも同じ笑みを向けた。
「宏則くん、ありがとう。私は、まだ行かないわ。大切な用が残っているの。それまで、光の中には行けない。でも、必ず、私もそっちへ行くわ。あなたと、お母さんとシャオファのように、私も幸せになるわ」
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