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俺たちが台湾から帰ってから、半月が経った。
まだ水夜の館へ道は、ハッキリと見えるし、行く事も出来る。
俺は出来るだけ、水夜と一緒に過ごし、彼女の笑顔を脳裏に焼き付けた。
それでも、想いは足りなくて、ある日彼女にプレゼントを買った。
もう、俺の自己満足でしかないのだけれど。
俺は水夜に、俺の世界でもう一度デートしようと誘って今度は昼間に待ち合わせした。
そして、彼女は当日の今日、初めて黒のワンピース以外の服を着て、俺の前に現れた。
ピンクブラウン…タータンチェックの大きめのシャツにデニムパンツを履いている。
いつも降ろしている長い髪は、緩く三つ編みにし、濃い茶色のキャップを被っていた。
俺を見つけた途端、パッと笑顔にして走ってくる水夜は、やはり普通の女の子と変わらない。
「すごい、かわいい、どうしたの?いつもと違くて誰か分かんなかった」
「ありがとう。伊蔵くんに教えてもらったの。こんなの着たら緋朝が喜ぶんじゃないかって。似合うかしら」
以前にデートした時にだって、彼女は人目をひいていた。
何を着ても彼女は絵になる。
今回も、あまりに綺麗な彼女をみんなが振り返り、男女問わず虜にしていた。
映画を観て、人気のカフェでお茶をし、それから夜は水夜が気に入った回転寿司へ行き、帰りに可愛い小鳥の形をしたお饅頭を買って、館に戻った。
ほんとは、夜景の見える高級なレストランでも予約して、ロマンチックな場所でプレゼントを渡したいと思ったけれど、やっぱり初めて出会った、水夜の館を思い出にしたかった。
(あと、水夜が回転寿司がいいと譲らなかったのもある)
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