190人が本棚に入れています
本棚に追加
水夜が箱から指輪を取り出し、俺の薬指にはめてくれた。
「あ、このデザイン」
「気がついた?陰陽の形をしているんだよ。だから、こうやってお互いの手の甲を合わせたら…このデザインが組み合うようになってる」
俺は自分の手の甲と水夜の手の甲を合わせ、指輪の陰陽の形をはめ込んだ。
「でも、実際は陰陽の意味は、どうでもいいんだ。水夜の名前の「水」の形に似てるからってのと、2人で組み合わせるデザインにしたかっただけ。実は伊蔵と一緒に考えて、頼んで作って貰った。……気に入った?」
苦笑いすると、水夜は「すごく嬉しいっ!」と伊蔵との話をクスクスと笑った。
「私の服のコーディネートと言い、緋朝の指輪といい、私たちは、お互いに伊蔵くんにお世話になってたのね」
「ホントだな」
この幸せはあともう少し。
だけど、俺たちの絆はずっと結ばれている。
***
それから、また数日。
仕事帰りに水夜の館に今日も寄る。
路地を通って屋敷の前の庭の前に立った時だった。
水夜はすぐに扉を開け、俺を出迎えてくれたが、俺は立ち止まったまま、周りを見渡した。
景色が少し揺らめいている?
目を擦って、もう一度景色を見ると、景色は揺れておらず、何もかもハッキリ見えた。
「緋朝…」
だけど、水夜もその異変に気がついたようだった。
俺の元へ走ってくると抱きつく。
「……まだ、今日は一緒に過ごせるかな?俺たち」
「………」
何も言わず、俺の胸に顔を埋める水夜を、ぎゅっと抱きしめた。
最初のコメントを投稿しよう!