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それから、次の日。
昨晩見た景色の揺れは、今度は目を擦っても消える事はなかった。
かと言って、少し、揺れているだけで、水夜と一緒に居る事は容易に出来るのだけど。
だけど、会いに行く度、テレビの画質が悪くなるように、景色はどんどん見えにくくなった。
俺たちのもうすぐ会えなくなるという不安と比例するかのように、この世界は俺には遠くなっていく。
そして、1週間ほど経ったある日。
とうとう、館の中へ入る事が出来なくなった。
扉を水夜が開けてくれても、柔らかな壁がそこにあるかのように、ボフンとぶつかった。
部屋の中も、灰色の世界でモヤがかかっている。
不安になった。
でも、水夜が出てきてくれれば、会う事が出来たので、屋敷に入れなくても、いい。
俺には古くて粗い画像に見える館の周りを、2人で散歩し、日記で会えた人達の館の裏に埋めた形見に手を合わせ、もういずれここには来れない事を報告し、水夜に笑顔をくれた事を感謝した。
「水夜、俺たちはあと何日会えるかな」
「会えなくなっても……すぐに会えるわ」
水夜は、水晶を使って俺たちの会える期間を、あえて見たりはしなかった。
怖くて見ることが出来ないらしい。
俺も、カウントダウンを知るのは怖かったから水夜に頼みはしなかったが、俺を阻む距離は、目に見えて近づき、徐々にここでの世界を小さくする。
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