宮本美世

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《美世side》 私は宮本美世(みよ)。 宮本緋朝と結婚したのはちょうど30歳の時で、それから52年、生活を共にした。 私達夫婦は子宝に恵まれなかったけれど、夫は優しく、そして、いつも私を労り、とても幸せな結婚生活を送らせてくれた。 "送っている"から"送らせてくれた"。 現在から過去形へ。 なぜなら、その夫が今、天国へ旅立ったから。 とても…寂しい。 「緋朝さん」 彼と私の出会いはお見合いだった。 人見知りで、どちらかと言えば大人しい性格の私は、「彼氏」と言うものが出来たことがなかった。 そう、30年間一度も。 数少ない女性の友達はいた。 でも、どうしても、男性と話そうとするとうまく話せないからだ。 だけど、両親は25歳を過ぎた辺りから「結婚」という言葉で私を責め立てた。 30の誕生日を迎えても、彼氏すら作らない、いや、作れない私に業を煮やし、たまたま母親が、フラワーアレンジメント教室で知り合った女性の息子さんが35歳の独身と言うことで、お見合い話を持ってきたのが始まりだった。 お見合いの席で、先に来ていた緋朝さんは、私と同じく「結婚」なんて、どうでも良さそうな顔をして、窓の外をボンヤリと見ていた。 それを後にお義母(かあ)様となる、典子さんが、肘で小突き、小声で叱っているのが見える。 そこへ、私と母が挨拶へ向かう。 「飯塚美世です」 と私が挨拶すると、緋朝さんは少し驚いた顔をして、こちらを見て、そして、私をしばらくジッと見つめたあと、「宮本、緋朝です」と、柔らかい笑顔を作ってくれた。
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