190人が本棚に入れています
本棚に追加
美世は俺をオドオドとした目で見ていた。
真っ黒で真っ直ぐなロングボブの髪。
色白で、長いまつ毛で縁取られた目。
水夜ではない。
でも、雰囲気が水夜に似ていた。
落ち着いた、ゆったりとした印象が。
「宮本、緋朝です」
俺たちは交際を始め、結婚した。
美世はとても優しく、初めの印象通り、落ち着いた物腰で俺を世話してくれた。
俺も彼女を幸せにしたいと心から思い、できるだけの事はした。
美世を愛していた。
ただ、たまに思い出すのは……
水夜が今どうしているのか。
美世に申し訳ないと思った。
水夜を忘れる事は出来ない。
でも、美世を大切にしたい気持ちは本物だ。
指輪は外して箱にしまっていたけれど、たまに眺めると、あの館に行きたいと強く思ってしまうのだ。
あの宏則からもらった綺麗な球も……
そういえば、その球は、そのうち指輪に吸い込まれるように
馴染んで、指輪のデザインのように、本当に陰陽のマークの様に丸い部分にはめ込まれた。
そうなったのは、水夜と会えなくなって、1年後。
まだ独身だった時だ。
どうしてそうなったかは分からない。でも、指輪を眺め過ぎたのかも知れない。
水夜の指輪にも、宏則から貰った光の球が指輪に入ったかな…?
俺のこと、考えたりする日があるのだろうか。
考えれば、考えるだけ寂しくて、悲しくて、心に穴が空いた様になる。
またそうやって水夜を想う自分に、今度は美世に寂しい想いをさせているんじゃないかと心が痛んだ。
最初のコメントを投稿しよう!