190人が本棚に入れています
本棚に追加
そのあと、水夜がお風呂に入っていたっぽい。
部屋に戻った俺はバッグの中から日記帳を取り出し、ベッドの縁に座った。
「……」
そして、ゴクンとツバを飲み込んでから、日記帳を開いた。
7/4(木)
傷の治りが悪い。
もう少し休んでから、あの廃屋に行ってみようと思う。
「たて子さん」と、あの廃屋と関係あるかもまだ分からない。
「今回はこれだけか……」
小さな擦り傷のようなのに、さっき聞いていたように水夜は怪我にかなり弱いようだ。
続けて読もう。
7/5(金)
指の擦り傷の血がなかなか止まらない。
微熱もある。
7/8(月)
ずっと眠っていた。目が覚めたら、ようやく血が止まっている。
明日には出かけられそうだ。
7/9(火)
夕方、例の廃屋近くの道へ行ってみる。
しばらく待ってみると。
いた。
電柱の影から、こちらを見つめている女性がいる。
どうやらあれが、たて子さんだと思う。
近づいてみると、縦長の目。薄くなった長い髪の毛。
廃屋のあの女性に間違いない。
タンスの中に入っていたあのフレアワンピースを着ている。
口元は笑っている。
だけど、縦になった目がギラギラしていて何を考えているのか分からない。
「あなた、ここで何をしているの?」
私は質問してみた。
が、彼女は口をガパリと開けただけ。
「おおおおおおお!じゃああああっ!」
彼女から返答はなく、叫び声と一緒にこっちへ走ってくる。
笑ったままだ。
私は仕方がなく、彼女をそのまま飲み込んだ。
たて子さんは、とりあえず、もう出なくなるだろう。
「………は?」
俺は呆気にとられて、そんな声を漏らした。
終わり?食べて終わり?
なに?なに?
その時、部屋の扉がノックされた。
「はい」
カチャと静かに扉が開き、水夜が顔を出した。
「入っていい?」
「あぁ、いいよ。どうぞ」
「日記帳、読んでたの?」
「そう。でも」
俺は日記帳を閉じる。
「なぁに?」
「たて子さんの名前は本当にたて子さんなのか?行方不明になった人はどうなった?彼女は何故あんな姿に?」
俺は立て続けに質問をする。
最初のコメントを投稿しよう!