たて子さん

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そのあと、水夜がお風呂に入っていたっぽい。 部屋に戻った俺はバッグの中から日記帳を取り出し、ベッドの縁に座った。 「……」 そして、ゴクンとツバを飲み込んでから、日記帳を開いた。 7/4(木) 傷の治りが悪い。 もう少し休んでから、あの廃屋に行ってみようと思う。 「たて子さん」と、あの廃屋と関係あるかもまだ分からない。 「今回はこれだけか……」 小さな擦り傷のようなのに、さっき聞いていたように水夜は怪我にかなり弱いようだ。 続けて読もう。 7/5(金) 指の擦り傷の血がなかなか止まらない。 微熱もある。 7/8(月) ずっと眠っていた。目が覚めたら、ようやく血が止まっている。 明日には出かけられそうだ。 7/9(火) 夕方、例の廃屋近くの道へ行ってみる。 しばらく待ってみると。 いた。 電柱の影から、こちらを見つめている女性がいる。 どうやらあれが、たて子さんだと思う。 近づいてみると、縦長の目。薄くなった長い髪の毛。 廃屋のあの女性に間違いない。 タンスの中に入っていたあのフレアワンピースを着ている。 口元は笑っている。 だけど、縦になった目がギラギラしていて何を考えているのか分からない。 「あなた、ここで何をしているの?」 私は質問してみた。 が、彼女は口をガパリと開けただけ。 「おおおおおおお!じゃああああっ!」 彼女から返答はなく、叫び声と一緒にこっちへ走ってくる。 笑ったままだ。 私は仕方がなく、彼女をそのまま飲み込んだ。 たて子さんは、とりあえず、もう出なくなるだろう。 「………は?」 俺は呆気にとられて、そんな声を漏らした。 終わり?食べて終わり? なに?なに? その時、部屋の扉がノックされた。 「はい」 カチャと静かに扉が開き、水夜が顔を出した。 「入っていい?」 「あぁ、いいよ。どうぞ」 「日記帳、読んでたの?」 「そう。でも」 俺は日記帳を閉じる。 「なぁに?」 「たて子さんの名前は本当にたて子さんなのか?行方不明になった人はどうなった?彼女は何故あんな姿に?」 俺は立て続けに質問をする。
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