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美世が、俺に話をしている。
そして、例の指輪を持ってきて、俺の手の中に入れた。
やはり、彼女は気にしていたんだ。
でも、
わがままな心を理解してくれてありがとう。
美世は本当に素敵な女性だった。
しばらくすると、俺は年寄りの身体から、若い時の身体に戻った。
死ぬと、自分のもう一度なりたかった自分の姿になると何かで聞いたことがあったけれど……
本当だったみたいだな。
俺は26歳の姿に戻った。
動きにくかった80歳を越した身体とは大違い。
軽い。
そして、美世が俺の手の中に指輪を入れてくれたおかげで、俺はすぐに指に指輪をつけることができた。
水夜、もう光の中に行ったのか?
それともまだ日記の続きをなんとかしているのか?
あの館は、まだあるかな?
俺は自分の家を離れ、あの場所へ行ってみた。
フワフワと流れる様に、街を漂う。
もう何十年も経っているから、風景が変わっている場所もある。
屋敷があるのか未だに不安だ。
あの場所の辺りも……新しい家が建っていたり、空き地になっていたりしたけれど、その中で、
あの路地が
見えた。
「あぁ…」
あれから何度かここに来てみたことはあったけれど、もう一度も路地が現れる事はなかった。
だから、俺も、もう見に行く事を諦めていたけれど、その路地が今、目の前にある。
入っていいのか?
路地に。
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