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「勿論覚えてるよ」
「あれから、ここから、この辺りまで、形見の品が増えてるの」
水夜が四角くく指差した範囲は、結構な広さだ。
俺が知ってる場所から、館の灯りが届かない数m先の範囲まであった。
沢山の人たちを助けて来たんだと分かる。
「……1人でよく頑張ったね」
「えぇ、緋朝と約束したもの。これで心置きなく光の中へ行けるわ」
「そうだな、俺も一緒に行くよ。向こうに行ったら、どんな事をしていたのか話を聞かせてくれよ。時間はたっぷりあるしな」
水夜は、俺の腕に自分の腕を絡めると、ギュッと力を込める。
「そうね、全部話すわ。実はあの後も、ずっと毎日日記を書いて来たもの」
「えっ!?」
俺が驚くと彼女はフフフと笑った。
「聞いて貰うのが楽しみ」
そして、俺たちは夜が明ける前、森の奥に見える光を目指して歩いた。
生きている頃は怖かった暗闇が全然怖くない。
勿論、俺の横に水夜がいるからと言うのもあるけれど。
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