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「指輪、本当にありがとう」
「何だよ、今更だな」
俺はプッと吹き出した。
「正直、ツラくて寂しい時もあったのよ。
でも、あなたのこの指輪が守ってくれた。あ、宏則くんと、シャオファの球もね」
水夜は、俺に手の甲をかざし、薬指につけられた指輪を見せる。
勾玉の形の丸い真ん中には、俺と同じように宏則がくれた球が埋め込まれている。
「うん、俺もだよ。……結婚しても、たまにこの指輪を眺めてた。妻はその事に気がついても、何にも言わなかった。その上、死んだ俺にその指輪を握らせてくれたよ。本当に彼女には感謝してる」
「いい奥様だったのね、私からも感謝したいわ」
俺たちはお互いに薬指を合わせ、勾玉を1つの丸にした。
「緋朝、必ず会いましょうね」
「……あぁ、必ずだ。絶対にお前を探すから」
彼女は目を細めて、ニッコリと笑った。
俺もその笑顔に笑顔で返す。
そして、彼女の目線に合わせて、少し体を折り曲げて、首を傾けた。
水夜は目を閉じ、俺たちは唇を重ねる。
そして、体が一瞬激しい光に包まれたかと思うと、俺たちは、丸い小さな球になり、雲の隙間から、お互いどこかに勢いよく飛ばされた。
そう、どこかで、俺と水夜は生まれ変わる。
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