たて子さん

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「あー、もう寝よ寝よ!」 俺は布団を被ったものの、なかなか眠れず、ようやく寝たのは多分かなり遅くなってからだった。 *** 「あ……」 ぼんやりと知らないまっすぐな道に立っていた。 なんだかネットリした空気。曇天。 また来たんだ、たて子さんの世界に。 2回目だから分かる。 今回読んだ日記の道だろうか? 近くにあの廃屋があるはず。 キョロキョロしたかった。けど、やっぱり顔は動かない。 あ。 何本か立っている電柱の、手前から2本目。 誰かいる。 誰か、と言うより確実にたて子さんだ。 怖い。 覗かせた顔の、縦についた目が相変わらず気味が悪かった。 そうだ、水夜は。 水夜はどこだ? 顔を動かせないから探せない。 早く近くに来てくれよ! 水夜! 俺は心の中で水夜を呼んだけれど、なかなか現れず、一緒に来るとか言うのは嘘だったのか、それとも失敗したのか、と慌てふためいた。 勿論心の中で。
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