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骨ばった細い指で、俺の拳を握り、そして子供が親を行きたい方に引っ張るように、自分の方に引き寄せた。
俺と水夜はたて子さんについて行く。
行く先は……あの廃屋だ。
今回は水夜が一緒だからいいけど、でも、行方不明者も出ている危険な人には変わりない。
気をつけないと。
***
廃屋の2階。
俺と水夜はあの何もない和室にいる。
たて子さんはと言うと、急に消えてしまったのだ。
「たて子さんは、何をしてんだろう」
「……さぁ?」
水夜は、自分の時とは変わってしまった状況を調べようとキョロキョロとして、俺の質問はどうでもいいような感じで返事をする。
「みやぁ、俺の話聞いてよ」
「はいはい、ごめんなさいね。んー……じゃあ、1階へ下りてみる?」
俺たちが部屋を出た時だった。
たて子さんが階段の下から現れた。
手には、丸い小さなトレー。その上に湯のみが3つ置いてある。
俺と水夜は顔を見合わせた。
彼女はお茶を入れていたのだ。
階段をゆっくりとギィ、ギィと鳴らしながら、一歩ずつ上ってくる。
俺たちは、元いた部屋に戻り、畳の上に座った。
ギィ、ギィ……ぺたっ…ぺたっ……
階段を上りきり、廊下を素足で歩く音がする。
夕方のかなり暗くなった部屋で、訳の分からない人を待つのは怖かった。
そして、たて子さんが、部屋に入ってきた姿を見て、思わず履いていたジャージのズボンをギュッと握る。
彼女は俺たちの前に座る瞬間、体が崩れたかと思う勢いでドシャッと座った。
そのせいで、湯のみからお茶が少し溢れる。
たて子さんは動きにくそうな指で、湯のみを掴むと、俺と水夜の前に1つずつ置いた。
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