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「お、あ、あぁぁ」
多分、お茶を飲めと言ってるのだろうと思った。
俺と水夜は、前に置かれた湯のみを取る。
が。
「!!」
お茶の中に小さな白い虫と黒い虫が何匹も浮いている。
蛆と、ゴキブリの子供か、これは…
気持ち悪くなった俺は、畳の上に湯のみを恐る恐る戻した。
水夜は、静かな顔をしたままそれを覗き、一気に飲み干した。
俺はギョッとしたが、何も言えない。
こんなの飲んだら腹壊すぞ。
だけど、たて子さんは満足そうにそれを見て、キッキッと声を出して喜んだ。
それから、 "お前も飲め" とでも言うように、俺の方に顔を向けた。
いや、俺は無理……
と、思っていても、たて子さんは縦の目で俺をずっと見つめている。
とりあえず話しかけて、お茶は忘れて貰おう。
「あの、名前、聞いてもいいですかっ?」
俺を見たまま、何も反応しない。
「えっと、な、ま、え。僕は緋朝です。ひ、と、も」
俺は自分を指差し、ゆっくり発音する。
「い、ど、も」
たて子さんが理解したのか俺の名前を発音しようとしている。
「そう、緋朝。あなたの名前は?」
「や、やよ、やよいぃ」
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