やよいさん

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*** 時は経って。 まだ皮膚の突っ張る感じの違和感はあるけど、膨らんだ傷あとは目立たなくなった。 その頃、伊織も私も17歳で、伊織は高校生活を楽しんでいた。 私は高校受験もせず、家でずっと過ごし、今に至る。 ある日、窓から外を見ていたら、伊織が帰宅し、歩いて来るのが見えた。 その横に、見知らぬ男子高校生。 仲よさそうに、並んで歩いてきた。 男子高校生は、目がぱっちりして、男らしいキリッとした眉、鼻筋も通っていて、爽やかな男の子だった。 可愛い伊織にぴったりの美男子だ。 ……いいな。 私も恋をしたい。 ううん、恋じゃなくても、友達が欲しい。 ……でも、こんな顔の私じゃ無理。 分かっていた。 そんな理由で学校だって、行けなかった。 それに、私と違い、伊織は明るくて優しい。 友達や彼が出来て当然なのだ。 「ただいま。弥生!着替えたら今日勉強した事、弥生にも教えるねー。」 「おかえり」 「なに?どうしたの?暗い顔してる」 制服を脱ぎながら、伊織は私に話しかける。 「なんでもない」 「なんでもないって顔してないよ、どうしたの?体調悪い?」 私も伊織のような顔だったら、今頃友達や彼がいたのかも。 「……今日、一緒に帰ってきた人誰?」 「いやだ、見てたの?仲良くしてる男友達よ、なんでもないわ」 そう言いながら、伊織は顔を赤くして嬉しそうにしている。 ……男友達じゃないでしょ? きっと、彼。 「ねぇ、弥生、櫛を買ってきたの。弥生の髪すごく綺麗でしょ?いい櫛を使うとすごく艶が出るんだって。綺麗に梳かしてあげる。ちょっと待って」 伊織がバッグから櫛を出してきた。 袋を開けて、私に見せてくれる。
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