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時は経って。
まだ皮膚の突っ張る感じの違和感はあるけど、膨らんだ傷あとは目立たなくなった。
その頃、伊織も私も17歳で、伊織は高校生活を楽しんでいた。
私は高校受験もせず、家でずっと過ごし、今に至る。
ある日、窓から外を見ていたら、伊織が帰宅し、歩いて来るのが見えた。
その横に、見知らぬ男子高校生。
仲よさそうに、並んで歩いてきた。
男子高校生は、目がぱっちりして、男らしいキリッとした眉、鼻筋も通っていて、爽やかな男の子だった。
可愛い伊織にぴったりの美男子だ。
……いいな。
私も恋をしたい。
ううん、恋じゃなくても、友達が欲しい。
……でも、こんな顔の私じゃ無理。
分かっていた。
そんな理由で学校だって、行けなかった。
それに、私と違い、伊織は明るくて優しい。
友達や彼が出来て当然なのだ。
「ただいま。弥生!着替えたら今日勉強した事、弥生にも教えるねー。」
「おかえり」
「なに?どうしたの?暗い顔してる」
制服を脱ぎながら、伊織は私に話しかける。
「なんでもない」
「なんでもないって顔してないよ、どうしたの?体調悪い?」
私も伊織のような顔だったら、今頃友達や彼がいたのかも。
「……今日、一緒に帰ってきた人誰?」
「いやだ、見てたの?仲良くしてる男友達よ、なんでもないわ」
そう言いながら、伊織は顔を赤くして嬉しそうにしている。
……男友達じゃないでしょ?
きっと、彼。
「ねぇ、弥生、櫛を買ってきたの。弥生の髪すごく綺麗でしょ?いい櫛を使うとすごく艶が出るんだって。綺麗に梳かしてあげる。ちょっと待って」
伊織がバッグから櫛を出してきた。
袋を開けて、私に見せてくれる。
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