やよいさん

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*** それから、私は伊織が帰ってくる時、彼をカーテンの陰から、そっと見るのが日課になった。 いいな、何て名前だろう。 喋ってみたい。 友達になりたい。 ううん、ホントは私を好きになって貰いたい。 ……無理なのは分かってるけど。 その想いが、どんどん膨らんで、心の中がモヤモヤして気持ち悪い。 「ただいまぁー!弥生。お母さんが今日ハンバーグって言ってたよ」 「おかえり」 伊織は制服を脱ぎ、部屋着に着替える。 その伊織の背中を見ていたら、自分の体の中でモヤモヤがどんどん大きくなっていくのが分かる。 「ねぇ、伊織」 「なぁに?」 伊織は私に背を向けたまま、答える。 「いつも、一緒に帰ってくる男の子の名前は何?」 伊織が私を振り返った。 「珍しいね、そんな事、今まで聞いてきた事ないのに」 「……別に。気になっただけだよ」 伊織は、何故かちょっと考えた後、私に笑顔を向けた。 「近藤……駿(しゅん)くんだよ」 近藤駿。 駿くんか…… 少し心があったかくなる。
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