190人が本棚に入れています
本棚に追加
「え……」
「駿に会わせるなんて出来ない」
「お友達になりた」
「イヤよ!弥生が双子の姉妹だとバレたら、どんな風に思われるか分からない!」
伊織は私の言葉を最後まで聞かずに、大きな声で叫んだ。
私と……伊織の間の空気に、亀裂が入ったように見える。
でも、こんなに悲しいのに、涙も出ない。
駿くん……は、
そうよ。私みたいな顔の子、友達にもなりたくないだろうし、ほんの、ガラスのかけらみたいな夢だった。
伊織は悪くない。
そうよ、伊織は悪くない。
伊織の初めての彼だもの。色々不安だものね。
仕方ないよね……
私は無言のまま、1階へ下りた。
ちょうどその時、母が買い物から帰ってきた所で、私がキッチンにいることを知らずに、入ってきて、小さく悲鳴をあげるほど、私の存在に驚いた。
「ちょっと!びっくりするじゃない!?何?欲しいものがあれば持って行くから1階にはあまり下りてこないでって言ってるでしょう?びっくりするのよ」
「お母さん、わたし、友達が欲しい」
「は?友達?無理よ。今お母さんがびっくりしたみたいに、みんな驚くわ。家で勉強してなさい。友達なんて出来るはずがない」
そこに伊織が2階から泣きながら下りてきた。
泣いている伊織に母は擦り寄り、心配した声でどうしたの?と伊織に声をかけた。
「もしかして、弥生が伊織を泣かせたの?」
こっちを睨む母を無視し、わたしは2階へ上がった。
泣きたいのはこっちじゃないか。
もっとわたしを慰めてくれてもいいんじゃないか?
最初のコメントを投稿しよう!