190人が本棚に入れています
本棚に追加
謝ろうとしたけれど、彼は手探りで家を出ようとする。
……悪い事をしてしまった、という思いはあったので、その男性をそのまま追うことはしなかった。
ただただ、ごめんなさいと思ったから……。
この事を反省して、私は人に会っても声をかけるのをやめた。
昔のように窓から外を覗くだけ。
幸い、1人じゃない。
子供達がいてくれるし。
そのまま、時は流れて、
勝手に私の家に入る人もいるけれど、私が現れると、相変わらず怖がって逃げた。
お母さんの言う通りだったと、今更、思う……
だけど、ある夕方。
とうとう、会いたい人に会ってしまった。
「駿くん……」
数年ぶりに会う駿くんは、すっかり大人になり、だけど、爽やかで素敵な面影は変わっていなかった。
心の中に潜めていた、淡い恋心に小さく火がついた。
彼は、うちの家をチラリと見上げたけれど、そのまま通り過ぎて行く。
いや……
彼を引き止めなくては。
やっぱり、会いたい。
今日は、あのワンピースを着ていないけれど、あのお花のピンも止めていないけれど、これを逃したら、もう会えないかも知れない。
私は階段を駆け下り、それから駿くんを追いかけた。
「駿くん!」
彼が私を振り返った瞬間、彼の目が見開いたのが分かった。
最初のコメントを投稿しよう!