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「駿くん、秘密のお部屋に連れて行ってあげる」
しばらくしてから、押入れの階段を見せた。
喜んでくれるかと思ったのに、彼は布団から暴れながら出ると部屋から出ようとする。
「ダメよ!行かないで!」
右足首がブラブラした状態で、まだ逃げようとする彼の髪の毛を掴むと、まるで小さな子供みたいに泣きじゃくる。
可愛い。
愛しい。
私の駿くん。
髪の毛を掴んだまま、私は彼を例の部屋に引きずり下ろした。
仕方なかった。
暴れるから。
その間も、駿くんは階段にしがみつこうとして、指先が傷ついたり、爪が剥がれたりして、階段に、引っ掻いたあとの血がついている。
あとで、手当てしてあげないと。
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3日もすると、駿くんは大人しくなった。
あれだけ私を怖がっていたのに、私が部屋に入ってきても驚かない。
寝転んだまま、私を力無い瞳で私を見つめている。
でも、
怖がらなくなって良かった。
だけど。
食べ物を持ってきても飲み物を持ってきても口に入れようとはしない。
子供達も食べてくれないんだけど……
3人を1人ずつ覗き込んで、心配していたら、1階の部屋から音がした。
誰か家の中に入って来たのだ。
私はみんなを置いて階段を上がる。
そして、押入れから出ようとしたところで、2階に上がって来たのが分かった。
いつもなら、お友達になって欲しいとおもてなしをしようと思うのだけど、今回はダメだ。
駿くんがもし、騒いだりなんかしたら、大事な大事な駿くんを取られてしまうかも知れない。
私はそのまま押入れから出ずに、奥に隠れた。もちろん押入れの床はフタをして。
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