やよいさん

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私は息をひそめる。 だけど、家の中に入って来た人は押入れを開けた。 そして、下段を覗き込み、私を見つけた。 女性だ。 もしかしたら私とあまり歳が変わらないかも知れない。 すごく綺麗な人。 「あなた、何をしているの?」 その女の子は静かに声をかけてきた。 「帰ってください!」 私はそう言って、襖を勢いよく閉めた。 ここの秘密の階段を、見つけられたら困るから。 足音が遠ざかる。 ホッとして胸を撫で下ろしたのもつかの間、他の部屋にも入ってるみたいだ。 キィと箪笥の扉を開ける音が聞こえた。 大事なワンピース!! 私は急いで部屋に行き、女の子が扉を開けているのを見つけ、急いで閉める。 その時、扉の端が彼女の指をかすめた。 少しだけ、怪我をしたようだ。 女の子は、自分の指を見つめ、なんだか仕方なさそうに家を出て行く。 私は、無言で彼女が出て行くのを窓から見送った。 よく考えたら、私の事を驚かずに話しかけて来た人は初めてだった。 もしかして、友達になれたかも知れない…… 残念だ。 駿くんの事を考え過ぎてた。 せっかく私の事を驚かないで話してくれたのに、あんな態度をとって。 私はため息をつきながら、また駿くんと子供達の所へ戻った。 相変わらず、みんなお茶も飲んでないな。 大丈夫かな…… 私はみんなに話しかけた。 さっきの女の子の話をしたかったから。 みんなは静かに話を聞いてくれていた。 ============ それからまた数日。 あの女の子は現れない。 駿くんはと言うと、目がうつろで、元気がなく、私が掴んで潰した足の傷口がジュクジュクで足先は紫の葡萄のように変な色になっていた。 綺麗に拭いてあげても、すぐに皮膚が崩れ血が滲んでくる。 足先は触るとブヨブヨとしていた。 白い絨毯も、血や体液なんかで、すっかり汚くなっている。 みんな元気がないのね……どうしたら楽しくなるかな。 そうだ。 なったらスーパーで何か買おう。 色々買ってきたら、駿くんも子供達も食べてくれるかも知れない。 私はそれをみんなに伝えたけれど、誰も何も言わず、駿くんはポロリと涙をこぼした。 嬉しいと思ってくれたのかも。 その日の夕方、私はスーパーに出掛けるため、外に出た。 なのに、こんな時に限って道の真ん中に人が立っている。 女性……? 今日は出来るだけ人に会わずにスーパーへ行きたかったのに。 そっと電柱に隠れたのだけど、なかなかその場を離れない女性。
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