幸せに導く

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俺は、息苦しさで目が覚めた。 ハッハッと短く息が漏れる。 汗びっしょりになっていて汗がダラダラと流れていた。 長い夢。 俺が、やよいさん本人の人生を歩んできたような夢だった。 もし、あれが本当にやよいさんの人生だったとしたら可哀想だ。 友達が出来る前に、水夜に……飲み込まれてしまった、と言う事だ。 それにしても、体が重くて動かない。 目だけで辺りを見回すと、やよいさんが正座して頭元に座り、俺を見下ろしていた。 叫びそうになるのをグッと飲み込む。 「や、よい、さん……」 俺と彼女は例の部屋の2階の和室にいた。 すっかり陽は落ちて、窓から電柱の街路防犯灯の灯りが入り、2人きりだと分かる。 2人きり? ……水夜は!? 「みやっ!?……っつ!」 俺はガバリと起き上がるが、頭に激痛が走る。 そうだ、やよいさんにカップで殴られたんだった。 頭を触ると、直後ほどではなかったが、まだ血は止まっていないようで、手に血がぬるっと付いてきた。 だけど、やよいさんが押さえていてくれたのだろう、頭の上からタオルが落ちる。 しかも、気を失っている俺の為に布団を敷いてくれていた。 乾いた血だらけの布団だったけど…… 多分この布団、駿くんとか言う人が寝かせられていた布団では……。 「やよいさん、血を押さえていてくれたの?ありがとう」 俺は内心怖いのがバレないようにお礼を言う。 やよいさんは「あ、あ、あ」と言いながらまたタオルで頭を押さえようとしてくれた。 しかし、窓の外からの灯りだけで見るやよいさんはかなり不気味で、手が震える。 「大丈夫だよ、ありがとう。それより、水夜は?み、や。分かるかな……俺と一緒いた女の子」 やよいさんの笑顔が、真顔になる。 両手に持っているタオルがグッと握られた。
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