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「やよいさん、約束、覚えてる?
パーティーしようね。
今日は帰るけど、絶対にまた来るから。ね?」
俺はやよいさんに、ゆっくりと発音し、小指を出して、信じてくれることを願った。
「あぁあぁあぁ、んぐんん、あぁあああー」
全く何を言っているのか分からないけど、やよいさんも小指をだしている。
……分かってくれたのかな?
「……じゃあ、帰るからね。また!
水夜、帰るぞ。なぁ、ほら、頑張って立って」
よろめきながら立ち上がるけど、膝がガクンと折れ曲がり、こけそうになる。
俺は水夜を受け止め、背中と膝の裏に腕を回し、抱き上げた。
彼女は、背が高めで細いのは分かっていたけれど……軽い。
そのまま水夜の頭と足がぶつからないようにゆっくりと、細い廊下を歩き、階段を上がる。
後ろからやよいさんも付いてきて、俺と水夜が和室に出ると、彼女は押入れの床を閉めた。
「……ありがとう」
無事に返してくれることに、俺は素直にお礼の言葉が出た。
信じてくれたと言うことだ。
でも、少し寂しそうにしている、やよいさんを残し、俺たちは一階の階段を下りて玄関を出た。
俺は、やよいさんの家を出て、少し歩いた所で再び水夜に声をかける。
「水夜!水夜ってば!帰ろう。どうやれば帰れる?」
水夜は、目を少しだけ開けて、それから俺の額を触る。
そして、自分の額も触った。
「うん、緋朝……帰ろう」
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