幸せに導く

8/38
前へ
/360ページ
次へ
再び、水夜を抱き抱えた俺は、水夜が教える部屋の扉を開けた。 1階のバスルームの隣の部屋。 そこを開けると、ゾクッとする冷たさと頭の中に鈍痛が広がるような重い空気。 決して部屋の温度が低いワケではないけれど、そんな冬の曇天の空のようなそんな空間が広がっていた。 「そこの……ベッドに寝かせてくれる?」 水夜は、ベッドを指さした。 俺はそこまで連れて行き、ゆっくりと彼女を下ろす。 「ありがとう。緋朝、今、何時?」 「1時58分……え!? 1時58分?」 俺が寝てしまった頃と時間がそんなに変わっていない。 やよいさんと話をしたり、気を失っていたというのもあったのに、時間は過ぎていないと言うことなのか。 「……明日の朝には、もう少し元気になると思うわ。それより、緋朝の頭の傷、心配。血が、すごい」 「大丈夫だ」 「この部屋に救急箱があるの。あそこの棚よ、箱があるでしょ?」 俺は木で出来た箱を取る。 中を開けると、どこの家庭にでもあるような薬や、絆創膏、包帯などが入っていた。 「消毒を、してあげる。こっち来て」 ツラそうに水夜が起き上がる。 「自分で出来る。大丈夫だ、水夜は寝てろ」 「ダメよ、キチンと手当しないと。ベッドに座って?言う事を聞かないと怒るわよ」
/360ページ

最初のコメントを投稿しよう!

190人が本棚に入れています
本棚に追加