幸せに導く

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それから、俺は数時間グッスリと眠った。 カーテンを開けたまま眠ったので、朝日の眩しさで目が覚める。 疲れが体に残っていたけれど、少しはスッキリしている。 「……そうだ、水夜!」 俺は勢いよく起き上がると、昨日水夜を寝かせた部屋まで小走りで行く。 そして、扉をノックした。 「水夜、開けていいか?」 中から何も聞こえないので、もう1度ノックする。 「水夜?」 「……緋朝……」 すごく小さな声が聞こえた気がした。 「いいか?開けるぞ?いいな?開けるからな」 中に入ると、水夜は昨日よりも具合が悪そうにベッドに寝ていた。 黒のワンピースはベッドの端に脱いであり、水夜は下着姿で横になっているのか、掛け布団から細くて白い肩が見えた。 目は力が無く、唇もいつもの艶やかさはない。 「頭の傷はどう?」 俺は頭を触る。 傷を触ると痛かったけれど、血は止まっている。 でも髪の毛に血が沢山固まっているのか、ガサガサした。 「大丈夫みたいだ」 「そう……良かった。……ごめんなさい、あなたは自分の家に帰って?今日は何も出来そうもないみたい。」 「何言ってんだよ、具合悪い人を放って家に帰れるか。なんか欲しいもんはないか?水とか食べ物とか……。 もう、やよいさんところで、あんな虫の入ったお茶飲むからだよ。元気な俺ですら腹壊すだろうし、気分だって悪くなる」 「……あの人の、最高のおもてなしだったのよ」
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