幸せに導く

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「緋朝……」 部屋を出ようとした時だった。 後ろから水夜の声が聞こえた。 「ごめん、起こした?何か食べれる?」 彼女は小さく首を左右に振る。 「食べやすそうな物と、飲み物買って来た。冷蔵庫に入れておきたいんだけど、勝手にキッチンに入っていいのかな?」 「勿論いいわ。ダイニングの右の壁、中央にキッチンへ続くドアがあるから」 「分かった。寝てな」 俺はまた部屋を出ると、昨日入った食堂に入った。 ガランとしたその広間の右側の壁に、扉がある。 水夜が昨日出入りしていたとこだな。 中に入ると、広い。 例え家族と住んでいたとしても広いキッチンだ。 ウォールキャビネットというやつだろうか… 収納しやすそうなお洒落なキッチンだ。 そのキッチンの奥に冷蔵庫があった。 と、言っても、普通の家庭にあるような冷蔵庫ではなく、業務用の大きな冷蔵庫。 開けると、あまり食材は入っていない。 俺はビニール袋ごと、冷蔵庫に突っ込んだ。 ジェル枕は、隣の冷凍庫へ。 もう、広すぎて何だかよくわかんね。 頭をくしゃくしゃと掻き毟ると、うっかり爪に頭の傷がガリッと引っかかった。 「いてぇっ!」 爪を見ると血がついている。 頭を触ると、塞がりかけた傷が開いたのか、再びヌルヌルしていた。 「あーっ!もう!こんな時に!」 自分のせいなのに、イラつく。
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