幸せに導く

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再び自分の部屋に戻ると、寝転びながら、しばらくティッシュで頭を押さえていたが、いつのまにかまた眠ってしまっていた。 思っていた以上に疲れていたのかも知れない。 *** 次に目を開けた時には、昼を回っていた。 頭をあげると枕カバーと髪の毛がくっ付いて、バリバリした感触と共に離れた。 白い枕カバーが血まみれになっている…… 「しまった……」 これは後で、自分で洗うとして、水夜の様子を見に行かないと。 部屋を出て、階段を降りる足が早くなる。 先にキッチンに寄り、冷凍庫から冷たくなったジェル枕を取り出し、水夜のいる部屋に急いだ。 広い屋敷だけに、いちいち遠く感じる。 「水夜?」 ノックする前に小声でドア越しに声をかけてみた。 それから、小さくノックする。 「水夜、入るからな」 俺は水夜の返事を待たずに、そぉっと扉を開けた。 忍び足で近づき、彼女を静かに覗いてみると、眠っている。 顔色は少し悪いけれど、眠れているのは良かった。 だけど、俺が寝ている間にまたあのスライムを何度か履いていたのか、床には大量の砂がこぼれていた。 多分、床に直接吐いたのであろう、同じ場所に 緑の砂が山になっている。 眠っている彼女の額に手の平を乗せてみると、少し熱い。 大丈夫かな。 俺の手が冷たかったのか、水夜の顔がピクリと動いて、一瞬眉間にシワを寄せた。 俺は急いで手を額から離す。 「ひとも……」 フワッとした寝起きの顔で俺を見つめる水夜。 熱もあるからか、まだボンヤリとしている。 「ごめん、手、冷たかったかな。 冷やしたジェル枕買ってきたんだ。タオル、使っていいかな? 熱があるっぽいし、頭冷やしたらどうかなと思って」 「うん、バスルームの壁面棚に、扉がついてる所があるわ。その中にタオルが入ってる。 ……ごめんなさい、本当に」 俺はバスルームに向かう。 バスルームとこの部屋は近くだ。 昨日使わせて貰ったから何となく分かるとは思うけど…… バスルームの壁面棚。 左端に確かに扉つきの場所がある。 開けてみると、棚が上下に分かれていて、上がバスタオル、下がスポーツタオルくらいの大きさのものが置かれている。 枕のサイズなら下の棚のタオルでいい。 1枚とって、再び水夜の所へ戻る。
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