幸せに導く

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だけど、水夜の体調がまた崩れるような事があってはならない。 俺は、それとなくどうやってあの世界に行けるのか、水夜に聞くことを決めた。 やよいさんとの約束は守らないと! 時間を見るとそろそろ30分。 俺は水夜の寝ていた部屋に向かった。 *** 「水夜?入っていいか?」 「もちろん。いいわよ」 俺は扉を開け、そっと中を覗く。 水夜は、いつもの黒いワンピースを着て立っていた。 髪は少し濡れている。 「体調どうだ?」 「うん、あんまり良くは無いけどマシよ。今の間に、これを外へ」 緑の粉をビニール袋に入れてあり、俺に見せる。 スーパーの袋、2つ分だ。 「おぅ、俺1人で行こうか?窓から指示をしてくれたら俺でも出来そうだし」 「いいえ、行くわ。大丈夫ありがとう。」 少しフラフラしながら、ホントに小さく笑顔を見せる水夜が、かわいい。 抱きしめたくなる。守りたくなる。 「さ、こっちよ。屋敷の裏に周りましょうか」 「分かった。しんどくなったら俺に掴まっていいから」 コクンと頷き、俺を見上げる顔。 熱のせいで頬がまだうっすら赤く、濡れている髪が色気があって……くそぉ、なんか、ヤバい。 なんか、好きかもしんない。 さっき考えていた、水夜が他の誰かと、他の世界に行くかも知れない事が、余計に嫌に感じる。 ………でも、水夜は、死人なんだよな……
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