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俺が、ビビっている間も、水夜は次々と霊を、黒い霧に巻いて吸い込んで食べていく。
美しい顔に不似合いな水夜の表情と、霊たち。
中には見た目がグロテスクでない、普通の人間のような霊も水夜の口の中に吸い込まれた。
無理……
……やっぱり、こういう世界の繋がりは俺には無理だ。
違う。
俺には怖いしかない。
やよいさん……
やよいさんにも、悪いけど……
こうして帰って来たんだ。
もう、行かないでも、いいんじゃないか?
約束したけれど。
待っているかも知れないけれど。
向こうで、殺されない保証もない。
閉じ込められる危険だってある。
もういいんじゃないか?
水夜や、やよいさん、俺はみんな世界が違うんだ。
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緑の粉は1時間ほどすると、霊を集める威力が無くなったのか、それとも俺の目にはもう視えなくなったのか、だんだんと霊の数が減り、最後は、初めに見た景色のように、ただの林が広がるだけになった。
水夜も、エネルギーがかなり回復したのか、あとはひたすら眠ると言う。
あの緑の粉を使わなくても、かなり少数だけど、定期的にあの部屋に集まる仕組みになっていると言っていたし、俺は自分のマンションに帰る事にした。
例の路地を通って帰る。
慣れた日常なのに懐かしい気がする自分のマンションの部屋。
夜の食事は、サラダとサンドイッチをコンビニで買って、1人でテレビを観ながらゆっくりと食べる。
霊と言えど、グロテスクな死体を見た後だっただけに、なんとなく米や肉類が喉を通らなくなってしまっている。
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