幸せに導く

24/38
前へ
/360ページ
次へ
俺が、ビビっている間も、水夜は次々と霊を、黒い霧に巻いて吸い込んで食べていく。 美しい顔に不似合いな水夜の表情と、霊たち。 中には見た目がグロテスクでない、普通の人間のような霊も水夜の口の中に吸い込まれた。 無理…… ……やっぱり、こういう世界の繋がりは俺には無理だ。 違う。 俺には怖いしかない。 やよいさん…… やよいさんにも、悪いけど…… こうして帰って来たんだ。 もう、行かないでも、いいんじゃないか? 約束したけれど。 待っているかも知れないけれど。 向こうで、殺されない保証もない。 閉じ込められる危険だってある。 もういいんじゃないか? 水夜や、やよいさん、俺はみんな世界が違うんだ。 ============ 緑の粉は1時間ほどすると、霊を集める威力が無くなったのか、それとも俺の目にはもう視えなくなったのか、だんだんと霊の数が減り、最後は、初めに見た景色のように、ただの林が広がるだけになった。 水夜も、エネルギーがかなり回復したのか、あとはひたすら眠ると言う。 あの緑の粉を使わなくても、かなり少数だけど、定期的にあの部屋に集まる仕組みになっていると言っていたし、俺は自分のマンションに帰る事にした。 例の路地を通って帰る。 慣れた日常なのに懐かしい気がする自分のマンションの部屋。 夜の食事は、サラダとサンドイッチをコンビニで買って、1人でテレビを観ながらゆっくりと食べる。 霊と言えど、グロテスクな死体を見た後だっただけに、なんとなく米や肉類が喉を通らなくなってしまっている。
/360ページ

最初のコメントを投稿しよう!

190人が本棚に入れています
本棚に追加