幸せに導く

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「やー、明日も早いし、今日はやめとくよ」 何言ってんだ俺。 チャンスだろ!? 「えぇ〜、超残念なんですけど。でも、のんはまた誘いますからね!」 ぷぅと頬を膨らまし、彼女は最後にニコッと笑う。 水夜なら、こんな豊かに表情をコロコロ変えないだろうな…… 水夜がしたら、どんなに可愛いだろう。 去っていく矢田さんを見送って、ぼんやりまた水夜の事を考えていた。 ……やめよう、やめようと思うと余計に考えてしまう。 ……体調大丈夫かな? いやいやいや! もう考えない事にしたんだろ、俺。 しかし。 結局、俺は2件目の誘いを断り、家に戻った。 *** 俺は、今、日記帳を片手に、また水夜の屋敷の前にいる。 いつもなら、扉を開けて出てきてくれる水夜が出てこない。 ……多分、まだ調子が悪いのだろう。 俺は一応、ドアノッカーをトントンと鳴らして、それから重い扉を開けた。 「水夜」 俺の声が小さく反響する。 俺は中に入って扉を閉め、それから水夜が寝ていると思われる1階の奥へ向かった。 食堂の横を通り過ぎ、廊下を進む。 そして、昨日寝ていた水夜の部屋の前に立った。
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