幸せに導く

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「水夜?」 俺は扉の前で声をかける。 「緋朝?」 中から水夜の声が聞こえ、そして、扉が開いた。 水夜が俺を見上げる。 いつもの黒いワンピースを着てそこにいる。 ホッとするような、胸が苦しくなるような変な気持ちになって、とりあえず微笑みかけた。 「今日は来ないと思っていたわ。どうしたの?何かあった?」 「いや、水夜の体調が気になってさ」 水夜は肩をすくめて片眉を上げた。 「それにしてはお酒臭いわね」 しまった。 そうだよな、こんな夜遅いし。 時計は22時半を回っていた。 「ご、ごめん。でも、心配してたのはホントだよ」 「……体調は完全とは言わないけど、だいぶいいわ。ありがとう。お茶でも飲む?」 俺は頭を左右に振った。 「いや、いい。すぐ帰るから。体調が昨日より良さそうだし」 「そう?でも待って。温かいお茶が飲みたいと思っていたところなの。緋朝も付き合ってくれない?」 「ん……」 俺たちは部屋を出て、食堂に向かう。 そして、お湯が沸く間、俺たちはテーブルに向かい合って座った。
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