幸せに導く

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*** 数日後。 水夜はすっかり元気になった。 俺も会社帰りに、彼女の顔色を見るために館に寄るようにしていた。 彼女はコンビニのフワフワのロールケーキが気にいって、ペロリと完食するまでになって、今夜も会社帰りに、ロールケーキと今日はミニエクレアも買って館に行く。 勿論、例の日記帳も持っている。 路地を抜けると、水夜は俺が来るのが分かっていて、いつものように扉を開けてくれた。 食堂に通してくれると、今日はだいぶ体調も良いみたいで、テーブルには軽い夜食程度の食事が用意されている。 「あれ、俺が小腹空いてたのよく分かったなぁ。これ、デザート。良かったら食べて」 「なんとなく緋朝の事は分かるのよ。どうぞ、召し上がれ。お菓子、どうもありがとう。あとで緋朝と頂くわ」 水夜は俺が買ってきたロールケーキとエクレアを冷蔵庫に入れにキッチンへ行ってしまい、俺は食事が用意してあるテーブルの前に座る。 おにぎりが2つと、チキンサラダ、それからワカメと豆腐の味噌汁。 味噌汁を箸でかき混ぜて啜ると、疲れた体に塩分と旨味が体に染み込む。 「うま……」 食べているうちに水夜が戻ってきて、日本茶をテーブルに置いた。 「味はどうかしら?」 「んまい……」 そして、彼女も俺の向かいに腰掛けた。 「ねぇ、緋朝」 「ん?」 「あのね、今週末、やよいさんの所に行こうと思うの。でも、何度も言うようだけど、本当に無理して来なくていいんだからね」 俺はおにぎりを咀嚼して、飲み込んでから口を開く。 「俺の気持ちを変わらねーけど。水夜と一緒に行くよ」
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