幸せに導く

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「……分かった。じゃあ、この間のように、この館に泊まる準備をしてきて貰える?」 「うん、分かった」 おにぎりをガツガツ食べていると、水夜は俺をしばらく見つめていて、小首を傾げた。 「ねぇ……本当に分かっているの?危ないんだから」 「ん?分かってるさ。明らか俺はビビッてるし。でも、決めたんだ。やよいさんと、死んだ3人を助けるって。それから水夜、君だって友達だろ?何かあったら助けになりたいし」 水夜は相変わらず無表情に俺を見つめていたけれど、そのあと「ありがとう」と小さく言った。 きっと、俺をあの恐怖の世界へ連れて行く事をまだ躊躇っているのだろう。 でも、お礼を言ったのは少しでも嬉しかったと思っていると思いたい。 俺はそんな事を思いつつ、水夜が作ってくれた料理を無言でがっついていた。 *** そして、その日はやって来た。 以前泊まった屋敷の俺の部屋に荷物を置いて、1階へ下りる。 水夜は食堂で、俺が買ってきたお菓子とジュース、それから水夜が作ったオードブルと、カトラリーを袋や籠に詰め込んで、やよいさんの家に持っていく準備をしていた。 あの世界にどうやって食べ物を持って行くのかと聞くと、物質を持って行くと言うより、イメージを持って行くのだという。 それでも、ちゃんと物は用意しないといけないのだとか。 「これ、俺の部屋に運べばいいの?それとも水夜の部屋?」 「いいえ、別の部屋よ。この間は、緋朝は外、私は家、違う場所に着いたでしょ?何故違う場所だったのか、分からないし….手を繋いで眠ってみたらどうかと。なるべく同じ場所に着くようにしなくちゃ。」 「えっ……そうなの?」 俺の問いに水夜は無言で頷く。 同じベッドで眠るってことだよな。 俺、寝れるかな…… 水夜は準備の手を止めて、俺を見る。 「でも、安心してね。隣に人が居ても眠れるように、ちゃんとおまじないをかけてあげるから」 俺は自分の気持ちがバレてしまったのかと動揺し、目をキョロキョロさせると、水夜が久しぶりに笑顔を見せた。 そして、また荷物を詰め始める。
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