幸せに導く

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水夜は、その手紙を折りたたむと、もう一度押入れの床下が開かないか調べ始めた。 だけど、指先が引っかかる様子もなく、ただの床なのは明らか。 穴が開いていた場所だけじゃなく、押入れのあちこちを探ってみたけれど、秘密の通路は見つからなかった。 「……もう、あの3人の骨を拾う事は出来ないんだな」 「そうみたいね……あの部屋は、やよいさんが作りだした部屋だったようね。 でも、きっと、やよいさんと一緒に成仏したのよ。そう思いたい」 俺は深く頷いた。 「……じゃあ、何か、やよいさんの形見を持って帰りましょう。私たちも彼女を忘れてはいけない……友達ですものね」 俺たちは、2階の別の部屋にある鏡台の引き出しから、花のついたピンを持って帰る事にした。 絡んだ髪の毛を取り、俺はポケットにそれを入れる。 が、その時、ふと締め切った部屋の中で、冷たい風が吹いた。 同じ部屋にある、古い箪笥の扉が、ギィと軋んで少し開き、中でカタ…と何かが転がった音がした。
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