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箪笥の扉を、恐る恐る俺は開けた。
しかし、中には何もない。
「……気のせいか。
…ん?」
扉を閉めようとした時、下に錆びた鍵が落ちている事に気がつき、それを拾う。
古い感じの、大きめの鍵だ。
「何の鍵かな……」
水夜も横から鍵を覗いてきた。
「この箪笥には鍵はついていないしね。もし、ついていたとしても鍵のサイズが大きすぎる」
部屋を見渡すけれど、鍵がついている家具などは無さげだ。
しかし、箪笥の中でカタンと音を立てたのは、この鍵だと思う。
……もしかして、やよいさんからの、手紙以外の他のメッセージだろうか?
「1階の部屋に何かあるか探してみる?」
「そうね」
俺たちは1階の部屋も色々探してみたが、それらしき物は何もない。
「持ち帰って調べる?」
「……」
水夜は鍵を見つめたまま、何も答えない。
「水夜?」
「……ええ、そうね。持って帰った方がいいかしら」
水夜はヘアピンと鍵を丁寧にハンカチに包み、そして俺たちは元の世界へと戻った。
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