190人が本棚に入れています
本棚に追加
/360ページ
出会い
その女性は水夜と言った。
出会ったのは、1年前。
でも、その前に出会った経緯を長いんだけど、聞いてもらいたい。
俺が仕事でミスって落ち込んで1人でやけ酒して……
フラフラと歩いていた所に見慣れない路地を見つけ、子供みたいに冒険のつもりで歩いて行った。
そして、驚いた。
割と大きな洋館がそこにあった。
路地を抜けるとそこに、急に、だ。
辺りを見渡すと森の様に木が生い茂っていて、夜の闇で向こうが見えない事から大分奥まで、それが続いているように思う。
まるで昔の洋画から切り取ってきたかのような日本のこの下町に不似合いな三階建ての洋館。
しかも廃屋っぽい…?
仕事の関係でこの辺りに引っ越して数年は経った。
あったかな、こんなとこ。
……なんで今まで気がつかなかったんだろう?
でも、酔っ払っていた俺はそんな事を思いもせず、その洋館に近づいた。
その時だった。
ギィイと、玄関の重そうなドアが開き、中から黒髪の美女が顔を覗かせたのだ。
それが水夜だった。
まさか、人がいるとは思いもしなくて驚いたけど、俺から出た言葉は。
「こんな廃屋に美人が1人で何してんの?
てか、1人?」
普段なら、勝手に他人の敷地内に入っておいて、そんな軽い口も叩かない。
て言うか、普段酔っ払ってもそんな事言った事ないし、言えないチキンなんだけど。
その日は、今考えるとおかしかった、俺。
「……失礼な人ね、ここは私の家よ」
最初のコメントを投稿しよう!