竜殺しの黒傘

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フィレルは迷いなく進み、ドラゴンが倒され、解体された場所にきた。ドラゴンの血と脂と焦げた臭いが充満している。 血だまりの側の、黒く焼け焦げた地面にフィレルはしゃがみこんだ。 そこは誰も食べないようにと、取り出されてすぐに炭になるまで心臓が焼かれた場所である。 キースも側に寄ってしゃがみこむ。 フィレルは黒炭をさっと払い、出てきた黒い鱗を掴むと捲る。 その下からは焼けてはいるが、形を残している肉塊が現れた。 「えっ、それって……ドラゴンの心臓ですよね?」 「そうだよ」 「ガンディールさんが細工を?」 心臓を焼いたのはガンディールだった。 フィレルはいつものようにニッコリ笑う。 「堅物の彼に不正は難しいよ。解体時は僕も手伝うから、心臓の端っこに黒種の鱗を刺しておいたんだ。鱗は火に強いからね」 「だって、それじゃ、フィレルさんがドラゴン増やしていたって事で……でも、何で……」 キースは理解が追いつかないまま言葉を発し、フィレルはそれに答える。
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