竜殺しの黒傘

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「フフ。愚問だなぁ。僕は黒傘が作りたいんだよ。君ならわかってくれるよね?黒傘って墓標みたいで美しくてさ、黒種から二本作って、一本は部屋に飾って、もう一本で次の黒種を殺すんだ」 今までに見た事がない恍惚とした表情のフィレルを見て、キースは怖くて飛び退った。 「その為に人をドラゴンに変えてるの?」 「人だけじゃないよ」 「問題はそこじゃない!」 キースが怒鳴ると、フィレルは哀しげにため息をついた。 「しくじったなぁ。期待しすぎて早まった。君なら僕の喜びを共有できると思ったから話したのに……」 「近づくな!」 伸ばしてきたフィレルの腕をキースは自身の短剣で振り払う。手応えにキースはフィレルを傷つけたと焦るが、フィレルの腕に傷はなく、むしろ短剣が折れ曲がった。 「そんなんじゃ、僕は傷つかないよ」 あまりにも哀しげな声音に、キースの方が罪悪感に襲われる。 「そこで何をしているんだ」 先程のキースの声を聞きつけてガンディールが現れた。 キースは目線を彷徨わせたが、よぎった罪悪感を追い払いガンディールに向かう。
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