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「君は、世間知らずだったけど、頭は悪く無かったね」
フィレルは、月に向かって雄叫びをあげるキースだった存在を見上げて呟いた。
慌ててやってきたハンター達が包囲を固める中、グレッグが折れ曲がったキースの短剣を拾う。
「アイツ……クソッ……何でこんな事に……。これだけは故郷に帰してやるからな」
「グレッグ。僕も彼の黒傘を作るから、一本届けてくれないか?立派なハンターだったと伝えよう」
「そう……そうだな」
グレッグは袖で目元を一拭きするとドラゴンに向き合う。
フィレルの側には各所に指示し終えたガンディールが戻って来る。
「お前が仕掛けたんだろ。何が目的で、どうやったんだ」
眉間の皺を更に深めてガンディールは詰め寄るが、フィレルは哀しげに首を振るだけで何も答えない。
だが、次の質問にはフィレルも言葉を返した。
「フィレル。お前はまだ人間か?」
「フフ。そんな事聞かなくても、もう知っているじゃないか」
口元にはうっすらと笑みが広がって、
「人間の僕は、とうの昔に死んでるよ」
月明かりに照らされた白い髪は鱗のように煌めいた。
(了)
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