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更に南の方角に行った街外れ。林の入り口に近い場所にポツンとある一軒家。
キースは扉を叩く。
誰の返事もない。
もう一度叩く。
やはり返事はない。
窓を覗くと、白い髪の人影が見えて、キースは恐る恐る扉を開けた。
ピリッと張り詰めた空気にキースは息を飲む。
床に膝をついた白髪の男・フィレルは、乳白色の刀身に向き合い、黒い鱗皮でスッと刀身を研ぐ。
刀身はその一研ぎで見違えるように美しさを取り戻す。
フゥっと息のついたフィレルはキースが居ることに気がついた。
「ごめんね。武具の手入れかな?」
フィレルの手招きにキースはおどおどと近づく。先ほどの光景にキースの心臓はまだドキドキしていた。
「見ない顔だけど、新人君かな?」
「は、はい。グレッグさんの元に今日から入りました」
「酒場のハンターか。正規には入れなかったの?」
「いや、それが……」
フィレルが武具を検視している姿を眺めながらキースは身の上を話す。
フィレルの優しげな表情と柔和な空気が、キースの警戒心を完全に解いていた。
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